トルクレンチを使わなくてもトルクの管理はできる!
4ストローク車で、吸排気が純正ノーマルの状態で、かつ燃調に異状なく、燃焼室にオイルの侵入などが無いならば、スパークプラグはそうそう駄目になるものではない。
つまり、エンジンの始動性が悪いとか、加速が悪いとか、燃費が異様に悪くなったとか、明らかな異常がある場合、プラグ交換だけで直ることは少ないので、別の原因を探った方が良いだろう。
適切な交換時期はプラグメーカーと車両メーカーで言っていることが異なるが、まあ、車両メーカーの交換サイクルに合わせていれば問題ない。
プラグ交換作業は、古いのを緩めて新しいのを取り付けるだけで終了だが、作業時に気を付けたい点は多い。
まずはプラグを外す際の注意点
プラグを外したら、現れるプラグホールは燃焼室に通じている。ここにゴミが落ちたら深刻なエンジントラブルにつながるので、プラグを外す前にまずは周辺のゴミを取り除いておく。
次にプラグ締め付け時の注意点
プラグは鉄でプラグを組み付けるシリンダーヘッドはアルミだ。プラグを斜めに締め込んだり、締めすぎてねじ山を壊せば、ダメージを負うのはシリンダーヘッドの方である。
といった注意点が存在するので、プラグの交換は特に注意して行いたい。
ヤマハ、セローのプラグ交換手順
ヤマハセローのプラグは外装パーツを外さずに交換できるので、非常に作業性が良い。
セローのプラグは車体左側からアクセスできる。火傷をしないようにエンジンは冷えている時に作業するのが良い。
プラグキャップを持って引き抜く。コードを持って抜くと、プラグコードが外れてしまうことがあるので注意。
プラグ周辺のゴミを吹き飛ばす。スプレー式のエアダスターやカメラのブロワー、コンプレッサーの圧縮エアーなどを使って念入りに。
プラグのサイズに合うプラグレンチを使用する。車載工具にも入っていることが多いが、やはりしっかりした工具を準備したい。
プラグレンチはメガネレンチやソケットハンドルをセットできるようになっている。セローはソケットハンドルに短いエクステンションを付けて使用した。
セローはプラグのセット位置が斜めになっているので、ハンドルの振れ幅の余裕があり、作業性は良好だ。瞬発的に力を加えてプラグを緩める。
プラグが緩んだらあとは手で緩めていく。ネジが渋い感じがあれば錆があるか、ねじ山のダメージがあるかもしれない。
無事に抜けてきた。多気筒車の場合、プラグコードの復元順序や作業中のプラグホールへのゴミの落下などが心配されるので、1気筒ずつ作業する方が良い。
外したプラグを見ればエンジンの燃焼状態が把握できる。セローは外周が黒くくすぶり気味だったが、中心電極はかなり白かった。しかし、このぐらいの白さは燃料を絞っているインジェクション車なら異常ない範囲だ。
気になったのはプラグねじ山部のワッシャーだ。このワッシャーはシールワッシャーであり、潰れることで密閉性を高めるものである。写真の状態では潰れていないので、締め付けが不足していた証拠である。
昭和時代はプラグはワイヤーブラシで掃除して再使用が定石だったが、これはプラグメーカーも推奨していない方法。基本的に交換するようにしたい。
今回はプラグの電極摩耗も無いようなので、プラグを再使用することにした。プラグのねじ山にグリスを塗布するのはプラグメーカーでは非推奨となっているが、こまめなメンテが期待できない乗りっぱなし車なので、ねじ山の固着を防ぐため耐熱グリスを塗布した。ブレーキパッド用のグリスは耐熱グリス代わりになる。
プラグの組み付け時は、最初に手締めすることを徹底したい。手で締めれば斜めになっていてもすぐに判断できる。
手で締めるところまで締めたら、ハンドルを使って締める。プロはワッシャーが潰れる感覚を手で覚えているが、経験の少ない人はトルクレンチを使う方が良いだろう。トルクレンチが無いなら角度法で締める。
どこまで締めたか目で見てわかるように工具にペンで印をつけておく。
ハンドルを付けて1/2回転締め付けた。
NGKプラグの箱には角度による締め付けトルクの目安が書かれている。ワッシャーが潰れていないなら、手で締まるところまで締めて1/2回転。ワッシャーが潰れたプラグを再使用なら1/16回転締める。ただし、今回ねじ山にグリスを塗布しているので、締め付けトルクが変わっている。
プラグキャップが緩くなっている時は、キャップの奥のターミナルをロックする部分が駄目になっていることもある。その際はキャップの交換が必要だ。
プラグキャップは「ジジジジ」っと手ごたえがあるところまでしっかり押し込んでセットする。エンジン始動してスムーズにエンジン回転が上がれば問題ない。
プラグ交換による変化
プラグの劣化が著しい場合は、新品交換によって始動性が良くなったり、燃費が向上したりといった違いを感じ取ることができる!
ここでメンテしたのは
乗りっぱなしセロー
実走行3万2700kmで定期メンテ無し、タイヤの空気も補充したか、オイルいつ交換したかもわからないほど日常の足として酷使されまくった車両。
いちおうエンジンがかかって異音も無い模様だったので、ひとまず走るのに不安が無いような状態になるようにメンテしてみた。