フォークオイルの油面調整は、専用工具のフォークレベルゲージがあれば超簡単だ。
前編はこちら
フォークオイルの汚れは底に溜まっていることが多い。
フォークオイルの汚れはゴムや金属の摩耗カスの混入によるものである。汚れはフォークのボトムケースの底面に溜まっているので、単にオイルを交換しただけでは汚れが取りきれない可能性が高い。
そこで、灯油(洗油)を使って洗浄する方法もあるのだが、そうすると今度はフォークの内部に灯油が残ってしまうことになる。
お勧めはフォークオイルで洗浄!
フォーク内に残っても問題ないのはやはりフォークオイルだ。フォークオイルは1リッター入りを購入して交換やオーバーホールを行ってもたいていの場合、少し余ってしまう。
余ったオイルは長期保管すると酸化が進み、性能が低下するのでできれば使うことは避けたいものだ。しかし、フラッシングオイルとして使うには十二分だ。
セローのフォーク内部をフォークオイルで洗浄
古いオイルを排出させたセローのフォーク内をフォークオイルを使ってフラッシング洗浄した。長期保管品のフォークオイルを内部に注ぎ、何度かストロークさせてすぐに排出させる。明らかに色が変わったオイルが出てくるので、少なからず洗浄できているのは見た目に理解できた。
フォークオイルでできるチューニング
フォークオイルには粘度がある。正立式フォークの場合、使用するのはたいてい10番か15番のオイルで、10番の方が柔らかい。
例えば、10番のオイルがメーカー指定されている機種に15番のオイルを使用すれば、減衰力を高めることができる。しかし、乗る人の体重によっては減衰が効きすぎた硬いサスペンションに感じるかもしれない。
一方、オイル量でも調整ができる。指定より多くオイルを入れる(油面を高くする)とその分、空気のスペースが減ることになり、フォークが縮みにくくなる。(空気の部分は圧縮されるがオイルは圧縮されない)
反対にオイルの油面を低くすると、空気のスペースが増えることで、フォークが沈みやすくなる。
セローのオーナーは大男なので油面を高めに
今回はセロー250の指定フォークオイルである15番を使用して、30mm油面を高めておいた。この程度で劇的変化はないかもしれないが、スタンダードのセッティングよりは多少は乗りやすくなっているかもしれない。
フォーク内部の洗浄作業
フォークオイルをピッタリ使い切ることはまず無いので、余った古いオイルをストックしてあった。
ストックオイルをフラッシング用に使うことにした。洗浄用の灯油などは、フォーク内部に残るとほんのり気持ち悪いので。
ストックフォークオイルを適当に注いで、インナーチューブを上下動させて内部を洗浄する。
洗浄後にオイルを抜き出してみると、汚れた形跡は見られなかった。いきなり新油を注ぐよりは多少は良い気がする。
フォーク内部の洗浄が終わったら油面の調整を行う
実際に使用するフォークオイルはフレッシュなものを使用する。フォークを完全分解したオーバーホールであればオイル量で油面を管理できるが、オイル交換時はフォーク内の抜けきらないオイルもあるので、実際の油面で管理する。
フォークオイルの油面計測には専用のフォークレベルゲージがあれば、油面調整作業は非常に楽である。ひと昔前はこうした専用工具は非常に高額だったが、今ではけっこう安価に輸入工具が手に入るので、使わない手は無い。と、思う。
フォークレベルゲージの油面を12.5mmにセットしておく。
フォークを最も縮めた状態でフォークレベルゲージをセットして。余分なオイルをシリンジで吸い取るだけで良い。オイルが少ない場合は、少し足して再度調整する。
フォークオイルレベルの調整ができたら、フォークスプリングをセットする。スプリングは上下の向きがある場合があるので、復元時は注意する。今回のセローは等ピッチだった。
スプリングの上にワッシャーをセットする。
フォークのトップキャップのOリングにシリコンオイルを薄く塗っておく。無ければフォークオイルでもOK。油分が無いとキャップを締めるときに摩擦でOリングが破断することもある。
フォークブーツはフォークが外れないと単品状態にならないので、この機会に洗浄しておいた。しっかり乾かして、シリコンスプレーで磨いておくと潤いが戻って、汚れも付きにくくなる。フォークブーツ復元時には水抜き穴の位置に注意したい。水抜き穴の位置を間違うとフォークビーツ内部に水が溜まって錆の原因となる。
フォーク復元前に、ステム三つ又の内側をウエスでしっかり清掃しておく。錆が出ていたらサンドペーパーで均して、薄くグリスを塗っておく。
フォークのダストシール部にメタルラバーを吹き付けておく。ゴムとインナーチューブを潤滑しておくことで、フォークの動きが良くなるし、インナーチューブの錆発生を抑制することができる。
フロントフォークが組み上がったら車体に復元する
フォークを復元したら、アクスルシャフトがスムーズに通るか確認する。ずれているようであれば、フォークの組み付けを確認する。
フェンダーのマウントボルトのねじ山が錆びていたので、グリスを塗布しておいた。腐食が進むとアルミのねじ山が上がって(メネジの山がボルトに付いてきてしまう)しまう。
フロントアクスルシャフトには薄くグリスを塗布しておく。シャフトは固定なので潤滑のためではなく、腐食防止のため。
アクスルナットは大きなトルクがかかるので、ねじ山をきれいにした上でグリスを塗布して締め付けた。
ブレーキキャリパー復元後は必ずレバーを数回握って、ブレーキタッチの復元を行う。
最後にフォークをストロークさせて、摺動がスムーズかを確認しておく。
作業完了後はテストライドを行い作業前後の違いを体感してみよう!
フォークオイルは交換すると違いを実感できることも多い。今回は油面を少し上げたこともあって、フォークがよりしっとりと動いて減衰が効いていることが体感できた。こういった作業前後の違いがてきめんに現れるのがバイクメンテの喜びのひとつである!