冷却系統のコンディションは水冷車の生命線!
空気より熱伝導率に優れた水をつかうことで、エンジンを効率的に冷却する水冷冷却式。
エンジン各部を循環する冷却水には、冷却経路内を腐食させないような防錆性と凍結時に体積が増加して冷却経路内を破損させないように不凍性が求められるが、これらの性能は、時間の経過と共に性能が低下していくため、定期的な交換が必要となる。
冷却水交換時は、ただ古いクーラントを抜いて新しいものを入れるだけでなく、経路を狭めたり、詰まらせる原因となる錆の有無やラジエターコアの状態、サーモスタットの適切な機能などとなる。
特にバイクの冷却水路は車に比べると狭いので、詰まりは大敵なのである。
一般的に冷却水は車検ごと交換が推奨されており、このサイクルであれば錆の発生を抑えつつ、冬場の凍結の心配も無いといえる。
冷却水(クーラント)の交換手順
スズキ伝統の設計なのか? 冷間時にはリザーバータンクに冷却水は入っておらず、純粋に冷却経路内の圧力が増大した際の冷却水の逃げ場として機能しているようだ。他メーカー車ではあまり見ない特異な構造だ。
ラジエターキャップは車体右側のシュラウドを外すと現れる。コアの潰れなどはほとんど見られなかったが、若干汚れていた。フィンの潰れや汚れなどは、冷却効率低下の要因となる。
ラジエターキャップは、ビスで回り止めされているタイプだったのだが、燃料タンクが邪魔で緩めづらかった。先の作業性向上も踏まえ、燃料タンクを外すことにした。
作業性向上のため燃料タンクを取り外す
燃料ホース端面は劣化によりひび割れていた。組み付け時はひび割れ部分をカットして応急処置する。たまにはタンクを外してみるとこんな不具合を発見できる。
左側のラジエター上部にはエア抜き用のニップルが設けられていた。冷却経路内のエアは冷却効率の低下や水流の妨げになるのでしっかりと抜いておきたい。
タンクを外すことでラジエターの内側もしっかり確認することができた。電動ファンは左側のみに付いており、右側には同位置にホーンが付いていた。
周辺環境が整ったところでクーラントを抜き取る
ラジエターキャップを開くと綺麗な冷却水が確認できた。量の不足も無いようだ。性能低下はしていないかもしれないが、この機会に交換しておく
車体右側のリザーバータンクは下から覗き込むようにして確認できるが、エアクリーナーケースの蓋を兼ねるサイドカバーを外すと視認しやすい。
冷却水の排出口となるドレンボルトは、ウォーターポンプ部に設けられているケースが多い。車体右下のウォーターポンプ部には樹脂製ガードが付いていた。
ウォーターポンプケースをよく観察し、ガスケットの入ったボルトがあれば、それがドレンボルトである可能性が高い。詳しくは車種別マニュアルを参照する。
ドレンボルトを外すと冷却水が勢いよく排出される。この時ラジエターキャップを外しておかないと冷却経路が負圧になってしまうので、先に外しておく。
続いて冷却経路の洗浄を行う。点滴でエンジンをアイドリングさせてウォーターポンプを回しながら、ラジエターキャップ部からホースの水を注入する。
ドレンボルトから勢いよく排出される水道水の色が無色透明になってからしばらくしたら洗浄は完了。錆、汚れが酷い場合は市販の洗浄ケミカルを使用しても良い。
虫の死骸や砂利で汚れていたラジエターフィンの洗浄を行う。非常にデリケートなので、硬いブラシなどでゴシゴシ擦らないように注意したい。
冷却経路の強制洗浄を行ったため、リザーバータンク内に水道水が溜まっていた。一旦外して内部の水を排出すると同時に内部の洗浄を行った。
冷却水には緑か赤の色が付けられている。どちらも性能に違いは無いが、元々入っていたものと同じ色のものを使わないと、色が濁って汚れて見えてしまう。
冷却水のドレンボルトはねじ山を嘗めやすいので、オーバートルクに注意して締め付ける。ドレンガスケットは原則的に新品交換するのが望ましい。
左側ラジエター上部のエア抜きボルトを緩めておく。ねじ山のサイドには切込みが入っていて、この切込みを通ってエアーが抜けるので、緩めるだけで良い。
ラジエターキャップ部からクーラントを注ぎ入れるが、一気に入れても細い冷却経路内には入っていかないので、何度かに分けてゆっくりと注入する。
左側ラジエター上部のエア抜き部からクーラントが溢れてきた。これである程度冷却水が行き渡ったと判断できるため、あとはアイドリング状態でエア抜きを行う。
ラジエター本体はアルミの薄肉ですぐに歪んでしまうため、オーバートルクに注意する。締め付け座のナットにレンチをかけて負担がかからないようにした。
しばらくエンジンをアイドリングさせた後、クーラント量を確認。減っているようであれば補充する。後は、ドレンボルト近辺の漏れ等を確認して作業は完了だ。
交換前後で明確に体感できるレベルで違いがわかることはあまりないかもしれないが、長く大切に乗りたいなら、早めの定期交換がお勧めだ!